日本消化器内視鏡学会甲信越支部

4.低用量TXT併用放射線療法が奏効した食道癌の3例

新潟県立がんセンター新潟病院 内科
星 隆洋、本山展隆、秋山修宏、佐々木俊哉、船越和博、加藤俊幸

 【はじめに】食道癌に対する化学放射線療法は5-FU/CDDPと放射線照射の併用によって行われてき た。高齢者の食道癌に対しては原発巣のみもしくはリンパ節転移があっても病巣が照射範囲に含まれ る場合、これまで放射線併用低用量FP療法もしくは放射線照射単独が推奨されてきた。しかしFP投 与時間が長いなどの問題点があった。今回、無治療食道癌に対し、低用量TXT併用放射線療法 (TXT:10mg/m2/weekを計6回(放射線照射1時間前に1時間かけて投与)、放射線照射:60〜66Gy (2Gy/回))を施行した3例を経験したので報告する。【症例1】80歳男性。平成18年5月 検診に て食道に異常を指摘され、3型食道癌(Mt T3N1M0)と診断された。本療法で原発巣の縮小がみら れ、PRと判定された。有害事象としてはGrade2の白血球減少がみられた。【症例2】77歳男性。平 成18年8月 食物摂取時に胸のつかえ感を自覚し、3型食道癌(Mt T3N1M0)と診断された。有害事 象は軽微で、原発巣・リンパ節の縮小がみられ、PRと判定された。追加化学療法としてTS-1+TXT療 法 2コース施行し、現在までCR継続中である。【症例3】74歳男性。平成19年1月 食道粘膜下腫瘍 経過観察のEGDにて0-I型食道癌(Mt T1bN0M0)と診断された。肺気腫による低肺機能のため、 手術適応なしと考えられた。有害事象としてGrade3の食欲不振・食道炎が出現し、6回目のTXT点 滴を行うことができなかった。原発巣は消失し、現在までCR継続中である。【考察】高齢者の食道癌 に対し、低用量TXT併用放射線療法で腫瘍縮小効果がみられた。低用量の週1回投与で奏効を認めた ことからTXTが放射線に対する増感剤として強く作用していると考えられる。【結語】合併症、高齢 などの理由でFP併用放射線化学療法困難例に対して本療法は有用な治療法であると考えられる。