日本消化器内視鏡学会甲信越支部

1.頚部蜂窩織炎を合併したKillian-Jamieson憩室の1例

信州大学医学部 消化器外科
北沢将人、小出直彦、斉藤拓康、村中 太、秋田倫幸、石曽根 聡、 宮川眞一
伊勢宮胃腸外科
神村盛宜

 咽頭食道憩室の多くは輪状咽頭筋と下咽頭収縮筋の間(Killian間隙)から突出するZenker憩室で あり、下咽頭収縮筋下縁と食道縦走筋の間(Laminer 三角)から突出するKillian-Jamieson憩室は 稀である。憩室炎および頚部蜂窩織炎を合併したKillian-Jamieson憩室に対し、待機的に手術を行っ た症例を経験したので報告する。症例は63歳女性。6年前より左前頚部腫瘤を自覚し、近医にて経過 観察されていた。3年前より同腫瘤が増大したため、CT検査、食道造影検査が施行され、咽頭食道憩 室と診断された。平成19年6月咽頭から左頚部に痛みが出現し、翌日には前頚部腫脹と皮膚の発赤が 出現し、経口摂取困難な状態となった。咽頭食道憩室炎による頚部蜂窩織炎と診断され入院、絶飲 食・抗生剤投与にて、症状は改善し、一旦退院となった。炎症の沈静化を待って根治手術を行った。 術前の内視鏡検査では、憩室より遠位側へのスコープの挿入ができなかったため、術中内視鏡を行い、 スコープを胸部食道へ留置して、手術操作を開始した。憩室は周囲と癒着していたが、比較的容易に 剥離でき、end GIAを用いて憩室を切除した。本症例の食道憩室はLaminer 三角から発生しており Killian-Jamieson憩室と診断した。