日本消化器内視鏡学会甲信越支部

35.約3年の経過で進行癌に進展した大腸LST(顆粒型)の1例

石和共立病院内科
高木 績
甲府共立病院内科
高橋大二郎, 加藤昌子, 西山敦士, 安田慎一郎, 小西利幸
同 病理科
畑日出夫

〔症例〕83歳女性。約7年前から糖尿病で通院中。下痢がつづき、下部消化管内視鏡検査を行ったところ、盲腸虫垂開口部に一致して、径20mm大の側方発育型腫瘍(LST)顆粒型を認めた。生検にてGroup3、adenomaの診断。高齢、併存症もあり、経過観察の方針となる。1年後、2年後のフォローの検査で、病変は拡大し、陥凹部も認められたが、経過観察とした。3年3ヵ月後の検査で、径30mm大の平皿状の隆起を呈し、進行癌の診断。貧血も出現し、手術を行った。手術標本の病理組織検査では、moderately differentiated adenocarcinoma with adenoma,ss,pType5,Cir,ly0,vo、リンパ節転移なしであった。

〔考察〕初回病変は、癌の可能性は低く、高齢、併存症もあり、経過観察とした。フォローの検査で、病変は早期癌から進行癌に進展・発育した。初回の方針にひきずられたこと、また、病変が虫垂開口部に一致していたため、内視鏡的治療に躊躇し、結果的に、内視鏡的治療の機会をのがし、手術のタイミングも誤った。高齢者といえども、大腸LSTに対しては積極的に内視鏡的治療を行うべきであると考えられた。大腸LSTの自然史をふまえ、高齢者のLSTの治療法を考えるうえで貴重な症例と考え、報告する。