日本消化器内視鏡学会甲信越支部

33.経過観察中に腸管嚢腫様気腫症を合併した潰瘍性大腸炎の1例

山梨県立中央病院 消化器内科
芦澤亜紀子, 小嶋裕一郎, 小林美有紀, 辰巳明久, 細田健司, 三澤綾子, 鈴木洋司, 廣瀬雄一, 望月仁, 高相和彦
同病理
小山敏雄(

腸管嚢腫様気腫症(PCI)は腸管壁内に含気性嚢胞が形成される稀な疾患で、その発症機序は不明である。今回我々は潰瘍性大腸炎経過観察中に発症したPCIの1例を経験したので報告する。

症例は34歳、男性。職業、魚屋。1994年より潰瘍性大腸炎直腸炎型、再燃緩解型として、サラゾスルファピリジンにて加療されていた。ステロイド治療歴はない。2005年3月31日実施の大腸鏡検査では、緩解状態であった。年に1回の定期検査目的で実施した2007年1月の大腸鏡検査で、上行結腸から肝彎曲部に周囲粘膜と同様な粘膜で覆われた弾性軟の半球状隆起が多発していた。また、やや青色調に観察される部位もあった。また、直腸には軽度の小黄色斑が観察されたが、他には潰瘍性大腸炎の活動性の所見は認められなかった。腹部単純レントゲン写真では、上行結腸に相当する部位に蜂巣状のガス像が多発して観察され、PCIの所見であった。自覚症状は認められなかった。

PCIは、基礎疾患の有無により特発性および2次性に分類される。特発性PCIは左側結腸に多く、2次性PCIは本症例のように右側結腸に多いとされている。潰瘍性大腸炎のPCI合併例は、潰瘍性大腸炎の活動性・病変範囲との関連などの面から興味深く、文献的考察を加えて報告する。