過形成性ポリープから鋸歯状腺腫を経由し発癌する経路はserrated pathwayとして報告されている。今回我々は、過形成性ポリープ由来の鋸歯状腺腫に合併した大腸癌を拡大内視鏡を用いて診断し、内視鏡的粘膜切除術(EMR)にて治癒切除できた症例を経験したので報告する。
【症例】60歳代、女性。
現病歴:残便感にて近医を受診し、大腸内視鏡にて、上行結腸に隆起性病変を指摘され紹介となった。 内視鏡所見:上行結腸に20mm大の結節状隆起性病変を認めた。病変は広基性で隆起の基部は周囲粘膜と比べてやや褪色調であった。隆起の頂部は発赤調で一部易出血性であった。ピオクタニン染色後の拡大観察では、隆起の基部はII型pit patternを認め、過形成性ポリープと診断した。隆起部分の多くは鋸歯状pitを呈し、鋸歯状腺腫と考えられた。頂部の一部にVI軽度不整pit patternを認めたことから同部位は癌で深達度はsm1以浅と診断し、EMRにて一括切除した。
病理学的所見:病変は17mm大のIs型で、組織学的には病変の辺縁部は過形成性ポリープの組織像であった。中心部には異型を有する鋸歯状腺腫を認め、鋸歯状腺腫の内部に高分化腺癌の所見を2ヶ所認めた。癌腺管の一部は鋸歯状を呈し、鋸歯状腺腫からの癌化を示唆する所見と考えた。癌は一部400μmの粘膜下層浸潤を認めた。最終診断:Adenocarcinoma in serrated adenoma with hyperplastic polyp, Type0-I+Ua,10×10mm, tub1, sm1(400μm), ly0, v0, HM0, VM0
【考察】同一病変内に過形成性ポリープ、鋸歯状腺腫、大腸癌が存在していることを、拡大内視鏡所見から術前診断することができた。
拡大内視鏡はserrated pathwayによる発癌の術前診断に有用であった。