日本消化器内視鏡学会甲信越支部

30.再燃性びまん性十二指腸炎を合併した潰瘍性大腸炎の一例

新潟県立新発田病院 内科
岩永明人, 本間 照
同 病理
阿部聡司, 夏井正明, 姉崎一弥, 若木邦彦
臨港総合病院 内科
上原一浩
新潟大学医学部 分子・診断病理学分野
味岡洋一

大腸炎発症15年目に、再燃性びまん性十二指腸炎を合併した潰瘍性大腸炎(UC)の一例を報告する。

症例は33歳、女性。16歳時発症の全大腸炎型UC。再燃緩解を繰り返し、22歳からは一時ステロイド依存性となった。発症後約10年間は病勢が不安定であった。しかし、GBFで軽快し、以後は入院が必要になるような再燃はみられていない。29歳でステロイド離脱。同年、第一子出産。サラゾスルファピリジンは継続していた。30歳7月心窩部痛、胸焼け出現し、上部消化管内視鏡検査にて十二指腸に膿性白点がびまん性に多発する発赤浮腫状粘膜を認めた。この時大腸炎の再燃を示唆する下痢や血便はみられなかった。H2RAに加え、5ASAを粉砕投与して、症状は軽快した。翌年6月で5ASA粉砕投与は中止した。しかしその7ヶ月後、心窩部もたれ感が出現。上部消化管内視鏡検査再検したところ、十二指腸球部から下行脚、水平部まで、前回と同様に膿性白点多発、発赤浮腫状粘膜を呈していた。胃は前庭部に軽度のびらん性胃炎を認めた。迅速ウレアーゼテストは陰性であった。大腸炎再燃の症状は今回もみられなかった。

UCは原則的に大腸が限局的に侵される疾患であると考えられてきたが、大腸外消化管病変として以前から終末回腸backwash ileitisや全摘後のpouchitisが報告され、その数も増加している。さらに近年本邦ではUC類似のびまん性十二指腸病変が報告されるようになった。このようなことから、UCは単なる大腸という一臓器の疾患ではなく、全身疾患として捉えられるようになった。今後、上部消化管病変に対しても注意を払い、その病態解明の一助となることが期待される。