日本消化器内視鏡学会甲信越支部

28.EVLデバイスを用いた内視鏡的吸引粘膜切除法(EMRL)を行った直腸カルチノイド5例の検討

長岡赤十字病院 消化器内科
山田 聡志, 三浦 智史, 坪井 康紀, 三浦 努, 柳 雅彦, 高橋 達
同 病理部
薄田 浩幸, 江村 厳
中沢内科・消化器科医院
中沢 俊郎
木村医院
木村 元朗
新潟大学医学部保健学科臨床生体情報学講座病理病態検査学
岩渕 三哉

当施設では直腸カルチノイドが10mm以内であれば、EVLデバイスを用いた吸引粘膜切除法Endoscopic Mucosal Resection using Ligating device(以下EMRL)を積極的に施行している。今回は今までに施行した5例ついて検討したので報告する。

対象は46歳から70歳までの男性3例、女性2例(平均57.0歳)で、1例は腹痛で近医を受診し、病変を指摘されたが、残りの症例は検診異常による受診で、無症状であった。全例画像検査でリンパ節腫大や遠隔転移を認めず、下部消化管内視鏡で下部直腸に黄色からやや白色調の粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認め、生検でカルチノイドと診断した。細径プローブによる超音波内視鏡を全例に施行し、腫瘍の大きさは5.1-8.4mm(平均6.8mm)であった。1例は第2層を、他の4例は第3層を主座とする腫瘤で、内部はほぼ均一な低エコーを呈した。固有筋層への浸潤がないことを確認後、粘膜下に局注しEVLデバイスで結紮し、O-リング直下をスネアにて切除した。局注から切除までの時間は平均9.6分であった。切除標本は全例がカルチノイドと診断され、1例は断端不明であったが、残りの4例は断端陰性であった。うち1例で切除2日後に血便を認め、緊急内視鏡で止血した。全例外来にて経過観察中であるが、現在のところ再発を認めていない。直腸カルチノイドは10mm以上になると転移の危険性が高くなるため、外科的治療が推奨されるが、それ以下であれば内視鏡的治療のよい適応である。EMRLは簡便であり、また切除断端との距離が取りやすいなどの利点があることから、10mm以下の直腸カルチノイドに対する有用な治療法であると考えられた。また治療方針の決定には超音波内視鏡が有用であった。