日本消化器内視鏡学会甲信越支部

27.著明な粘膜剥離を生じるも保存的に改善し得た虚血性大腸炎の一例

新潟医療生活協同組合 木戸病院 内科
摺木 陽久, 上野 亜矢, 佐藤 秀一

 症例は72歳、女性。一週間程便秘をしていたため、平成18年12月17日の夜に下剤(センノシド)を服用したところ、12月18日午前4時頃より腹痛、下痢、嘔吐が出現し、同日近医を受診した。白血球の増加は認められなかったが、腹部の強い圧痛が認められたため、同日同医より当科を紹介され受診した。受診時腹部全体に、触れるだけでも痛い程の腹膜刺激症状と思われる強い圧痛と筋性防御があり入院した。来院時の腹部CT検査にて、著明に拡張したS状結腸を認めたが、free airは認めなかった。血液検査上、白血球の増加はなくCRPの軽度上昇を認める程度であったため、絶食と抗生剤投与にて治療を開始した。入院翌日、熱発と多量の下血を認めた。大腸内視鏡検査を施行したところ、S状結腸に出血と全周の2/3周程度の粘膜剥離を認めた。同時に注腸検査も施行したが、穿孔は認めなかった。数日にて発熱も消失し、徐々に腹部の自発痛、圧痛も軽減していった。経過観察のため施行された大腸内視鏡検査上も、潰瘍はS状結腸の一部に限局しており狭窄もきたさず改善傾向を示した。平成19年2月3日退院し現在当科通院中で経過良好である。本症例は便秘、下剤の服用を契機に発症し、著明な粘膜剥離を生じたが保存的に改善し得た虚血性大腸炎と考え報告する。