日本消化器内視鏡学会甲信越支部

24.ボーリング生検にて放線菌塊の流出を認めた十二指腸粘膜下腫瘍の1例

長野市民病院 消化器科
立岩 伸之,長谷部 修,彦坂 吉興,丸山 雅史,武藤英知,越知 泰英
同 病理
保坂 典子

症例は54歳,女性。自覚症状なし。IUD留置なし。49歳時に体中部小彎の早期胃癌に対し他院にて幽門側胃切除(Billroth I法)が施行された[0-IIc, 41x38mm, sig, m, ly0, v0, ow(-), aw(-), n(-)]。術後のフォローアップを目的に当院紹介となり,2006年12月15日に上部消化管内視鏡検査を施行したところ十二指腸主乳頭の口側に約20mmの粘膜下腫瘍を認めた。超音波内視鏡では,第3層に主座をおく無エコーの嚢胞性病変で内部には粒状の高エコーが散在していた。ボーリング生検をしたところ,粘膜下腫瘍の内部より透明な液体とともに白色調の顆粒の流出を認めた。顆粒を採取し病理組織学的検索を行ったところ,放線菌塊であった。自覚症状はなく抗生剤投与は行っていない。消化管放線菌感染症は骨盤・大腸で報告がみられるが,医学中央雑誌による検索では十二指腸の報告例はみられなかった。本症例は感染徴候や壁外からの炎症所見がなく,十二指腸内に限局していた点で,興味深い内視鏡・超音波像と考え報告する。