日本消化器内視鏡学会甲信越支部

23.「Intraluminal duodenal protrusion」の1例

下越病院 消化器科
原田 学, 河内 邦裕, 渡邊 敏, 畠山 眞, 山川 良一

【はじめに】Intraluminal duodenal protrusion(IDP)は1988年に稲本らにより提唱された稀な疾患である。今回われわれはIDPと思われる一例を経験した。

【症例】71歳の男性で肺気腫にて在宅酸素療法中であったが、2000年1月に上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下行脚口側に基部を有する5cmの細長い隆起を指摘された。その表面は脳回転様で平滑で柔らかく可動性を認めた。生検では隆起表面は正常の十二指腸粘膜で、腫瘍や炎症の所見は認めなかった。上部消化管透視検査では十二指腸下行脚に基部をもち球部に伸びる細長い隆起性病変と傍乳頭憩室を認めた。2005年6月に隆起基部の軸捻転による虚血が原因と思われる出血をきたしたが、保存的治療にて良好に経過した。2006年6月には発見時とほぼ同様の内視鏡所見であった。

【考案】IDPは日本では12例が報告されているが、海外での報告はない稀な疾患である。その特徴は表面は正常十二指腸粘膜からなる紐状隆起で、内部には疎な間質をもつことである。その成因は不明とされているがIntraluminal duodenal diverticulumと同様になんらかの先天的な異常に加えて、蠕動などの後天的な要因が加わり発生するものと考えられている。本症例は柔らかく平滑な表面構造をもつ細長い隆起という特徴的な内視鏡所見を呈し、生検で正常の十二指腸粘膜を認め腫瘍や炎症を否定できたことからIDPと診断した。慢性呼吸不全にて在宅酸素療法中であることから内視鏡的切除はせずに経過を観察している。

【まとめ】IDPを解明するためには今後とも症例の蓄積が必要であると思われる。