日本消化器内視鏡学会甲信越支部

22.ESD法による内視鏡的切除を行った十二指腸乳頭部gangliocytic paragangliomaの1例

飯田市立病院内科
五味大輔, 中村喜行, 岡庭信司, 海野洋, 白旗久美子
飯田市立病院臨床病理科
伊藤信夫, 金井信一郎
飯田市立病院外科
金子源吾, 堀米直人
嶋倉内科胃腸科医院
嶋倉勝秀

 内視鏡的切除にて診断し得た十二指腸乳頭部gangliocytic paragangliomaの1例を経験したので報告する。 症例は59歳、女性。検診の上部消化管造影検査で要精査となり内視鏡検査を受け十二指腸乳頭部に粘膜下隆起性病変を指摘され精査目的に紹介となる。

十二指腸乳頭部小帯に乳頭開口部とは距離を置き、正常粘膜に被われた可動性を有する腫瘤を認めた。超音波内視鏡検査では第3層に存在する高〜低エコーの混在する境界明瞭な8mm大の腫瘤で、膵管胆管とは関連性を認めなかった。CTでは造影早期での濃染は弱く、後期相にかけて遅延性濃染が認められた。生検にてカルチノイド腫瘍が疑われたが、EUS所見、CT造影所見と必ずしも一致しない事、1cm以下であり、固有筋層への浸潤や、転移の所見がないことより完全生検目的にESD法を用い内視鏡的切除を行った。腫瘍は粘膜下層を主座とし、上皮様細胞、神経節‐神経節様細胞、紡錘形細胞で構成されておりgangliocytic paragangliomaと診断した。

Gangliocytic paragangliomaはほとんど例外なく十二指腸乳頭部に存在し、基本的に良性腫瘍であるが生検では正診に至らないことが多いため、膵頭十二指腸切除術後に診断される場合がある。この点、内視鏡的切除による完全生検は過大な侵襲を避けることができ、有意義である。また、ESD法による切除は切除範囲を明確に設定でき、乳頭開口部への影響を避けることが可能であり、きわめて有用な手技である。