日本消化器内視鏡学会甲信越支部

21.膵嚢胞ドレナージ後門脈ガス症例

新潟市民病院 消化器科
古川浩一, 河久順志, 濱 勇, 横尾 健, 相場恒男, 米山 靖, 和栗暢生, 杉村一仁, 五十嵐健太郎, 月岡 恵

近年、CT診断の普及に伴い比較的稀といわれていた門脈ガス像にしばしば遭遇するようになり、内視鏡検査処置に続発する門脈ガスについても報告例が散見されてきている。今回、われわれは経胃的膵嚢胞ドレナージ術直後に門脈ガス像を呈した一例を経験したので報告する。【症例】58歳、男性。急性重症膵炎、感染性膵嚢胞にて当科転院。動注療法実施し膵炎は収束、感染性膵嚢胞も沈静化した。退院し、外来にて経過観察していたが膵嚢胞の漸増所見、腹部圧迫症状を認め膵嚢胞ドレナージ術目的に再入院となる。MRIにて嚢胞は単胞性でERCPより膵管と嚢胞に交通を認めないことから、経胃膵嚢胞ドレナージ術を選択した。電子コンベックス型の超音波内視鏡(オリンパスGFUCT240P)を使用し、エコー下にて嚢胞穿刺、ガイドワイヤーを留置した。拡張の後にドレナージチューブを試みるも難渋し、治療を中断。腹腔内の遊離ガス像や嚢胞液の漏出を確認するため直後にCTを試行し、脾静脈、門脈にガスを認めた。しかし、腹痛、発熱、など臨床症状も認めず、循環、呼吸安定し、検査成績にても有意な所見を認めなかったことから抗生剤投与のみで保存的に経過観察した。翌日のCTにて門脈ガス像は自然消失し、その後もなんら特異的な症状を呈しなかった。初回のドレナージ試行3日後に再度ドレナージを試み7Fr両側ピッグテールチューブを留置。外来での経過観察で嚢胞の完全消失が確認された。【考察】門脈ガスの発生は腸管壊死を合併するものが多く報告されている。しかし、急性胃拡張に伴う門脈ガスも散見され、本症例では内視鏡処置による送気により胃・腸管拡張状態が発生に関与していたことが推察された。内視鏡の偶発症や門脈ガス成因を検討するうえで示唆に富む症例と考えられた。