日本消化器内視鏡学会甲信越支部

20.内視鏡的に砕石除去しえた巨大な十二指腸石の1例

長野赤十字病院総合診療科
徳竹 康二郎, 金児 泰明,
消化器科
伊藤 哲也, 三枝 久能, 原 悦雄, 森 宏光, 松田 至晃, 和田 秀一, 清沢 研道

症例は91歳男性。H18年10月末から嘔吐を繰り返すようになり近医へ入院となった。2日ほどで嘔吐は改善したが、第4病日に急性胃拡張様の症状が出現し胃管の留置などの治療を受けた。第9病日より経口摂取可能となったが、第16病日のCT・十二指腸造影・内視鏡検査の結果、十二指腸下行脚に卵円形の結石を認めたため、当科へ紹介入院となった。入院時の検査所見では貧血と炎症所見を軽度に認めるのみであった。内視鏡所見では下十二指腸角付近で内腔をほぼ閉塞する結石を認めたが、可動性が認められ、周囲の粘膜には炎症所見を認めないものの、結石近傍に大きな十二指腸憩室を認め、その肛側縁に十二指腸乳頭が認められた。十二指腸造影では結石と憩室の大きさはほぼ同大(55×42mm)であった。第29病日にあらかじめバスケットを用手的に大きく広げておいた総胆管結石用の機械的砕石器で砕石を試みたところ砕石が可能だった。砕石後は特に偶発症を認めず、糞便中に結石片の排出を認め、翌日の内視鏡では若干の破片が残るものの十二指腸第3部には小さなびらんを認めるのみであったため経口摂取を開始し、以後順調に経過して第32病日に退院となった。結石の成分分析の結果はビリルビンカルシウム 70%,脂肪酸カルシウム 30%であった。結石の形成機序については、結石分析からは総胆管結石の排出の可能性も考慮すべき結果であったが、胆道の拡張所見を認めないことや乳頭所見より否定的と考えられ、結石近傍にほぼ同大の十二指腸憩室が認められたことより、憩室内に形成された結石が何らかの機序で排出されたものと考えられた。