日本消化器内視鏡学会甲信越支部

17.超音波内視鏡下吸引細胞診(EUS-FNA)でびまん性B細胞性悪性リンパ腫と診断し化学療法で完全寛解した膵悪性リンパ腫の一例

独立行政法人国立病院機構松本病院 消化器科
宮林秀晴, 羽場 真
同 内科
松林 潔, 古田 清, 北野喜良
同 外科
小池祥一郎
同 臨床検査部
中澤 功
信州大学医学部 消化器内科
新倉則和

症例は57歳・女性。生来健康であったが2006年12月上旬から食欲不振となり当院を受診。外来受診時理学所見で腹部に弾性硬の腫瘤を触知し、精査のため入院。腹部CTで約6-7cmの低吸収域とエンハンスされる腫瘤を膵頭部に認めた。周辺リンパ節・傍大動脈リンパ節腫脹は認めなかった。CTパターンからリンパ腫を疑い、EUSとERCPを施行。主膵管の圧排所見と主膵管・分枝の狭窄は認めず、同疾患を疑いブラシ細胞診をしたところ悪性リンパ腫と診断した。リツキサン投与の適応とリンパ腫の表面マーカーを含めたより詳細な検索を目的としたEUS-FNAのため、信州大学消化器内科に紹介。EUS-FNAによる組織診・細胞診でびまん性B細胞性悪性リンパ腫(DLBCL)と診断されR-CHOPによる化学療法を施行した。1回目のR-CHOPでほぼ腫瘍は消失し、現在4回目のR-CHOPを終了しているが、完全寛解を維持している。膵悪性リンパ腫は比較的まれな疾患でありこれまで非手術例で組織診を含めた正確な診断を得ることは難しいとされてきた。ブラシ細胞診で悪性リンパ腫と診断し、EUS-FNAで表面マーカーを含めたリンパ腫の正確な診断が可能であったことから同手法が今後同疾患の治療戦略を立てる上で重要な位置を占めるものと考えられた。