日本消化器内視鏡学会甲信越支部

16.胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)に合併した胃MALTリンパ腫の1例。

県立がんセンター新潟病院内科
竹内 悟, 加藤俊幸, 秋山修宏, 本山展隆, 船越和博, 佐々木俊哉, 星 隆洋

 症例は69歳女性。1996年胃部不快感と食欲低下を主訴に来院、血色素5.0g/dl、血清鉄2μg/dlの鉄欠乏性貧血のため赤血球輸血を受け鉄剤の内服で軽快した。3年後には再びHb5g/dlの貧血を生じ鉄剤を内服した。2000年の胃内視鏡検査ではwatermelon stomachと呼ばれる胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)と胃体上部の脳回状に隆起した胃MALTリンパ腫の合併を認めた。診断時はHb10.1g/dl、血清鉄132μg/dl、H.pylori陽性であったためGAVEに対する内視鏡的治療よりも除菌治療を優先した。除菌7ヵ月後にはMALTリンパ腫は平坦化して腫瘍細胞陰性となり、その後5年以上再発を認めていない。GAVEの所見には変化なくHbは10g/dl前後で推移し除菌後には鉄の吸収が改善していることも考えられたが、2007年貧血の悪化を生じたためAPCによる内視鏡的治療を行った。

 GAVEと胃MALTリンパ腫の合併した報告はなく関連性はないと思われる。しかし、MALTリンパ腫除菌無効例で放射線照射が選択されることが増えており、照射後のGAVEやDAVEの発生が危惧される。