日本消化器内視鏡学会甲信越支部

13.再建胃管に発生した胃前庭部毛細血管拡張症の1例

山梨大学 医学部 第一外科
河口賀彦, 河野浩二, 中山裕子, 須貝英光, 藤井秀樹

 患者は59歳の男性。平成14年1月8日、胸部中部食道扁平上皮癌の診断で、右開胸開腹食道亜全摘術施行。大弯側細径胃管による胸骨後経路、頸部吻合再建術を行った。術前の上部消化管内視鏡検査にて、胃に病変は指摘されなかった。術後経過は良好で、その後外来経過フォローとなった。外来経過中、平成17年3月28日の採血上、Hb 3.5g/dlと著明な貧血を認め、タール便の出現を認めた。出血源の検索による上部消化管内視鏡検査にて、再建胃管の幽門輪より放射状に延長する縦長の発赤帯を認め、出血が確認された。また、それらは近接にてコイル状に蛇行した毛細血管から構成されており、胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)と診断し、同病変からの慢性出血と判明した。内視鏡下アルゴンプラズマ凝固療法を2回実施し、GAVEは消失し、胃粘膜の再生上皮化により治癒した。その後、出血の再発は認められていない。

 再建胃管に発生した胃前庭部毛細血管拡張症は非常にまれであり、若干の文献的考察を加え報告する。