日本消化器内視鏡学会甲信越支部

12.手術から3年後に胃壁内転移をきたした右下顎骨原発形質細胞腫の1例

佐久総合病院胃腸科
古立真一, 小山恒男, 宮田佳典, 友利彰寿, 堀田欣一, 高橋亜紀子, 北村陽子, 山里哲郎, 松村孝之, 吉田晃, 岡本耕一, 田沼徳真, 米田頼晃, 大瀬良省三

<はじめに>消化管に発生する髄外性形質細胞腫は稀である。今回、右下顎骨原発形質細胞腫の手術から3年後に胃SMT様隆起が出現し、右下顎骨形質細胞腫の胃転移と診断した1症例を経験したため報告する。

<症例>60歳、男性。既往歴:56歳時に右下顎骨形質細胞腫と診断され、手術後に放射線療法を施行し、完全寛解を維持していた。現病歴:59歳時の人間ドックの上部消化管内視鏡検査にて、体上部前壁大弯側寄りに5mm大のSMTを認めた。1年後の上部内視鏡検査時には15mm大まで増大し、頂部に発赤陥凹を有していた。EUSでは、一部に高エコーを認めるが内部は全体に低エコーであった。また病変の主座は3/5層にあり、4/5層以深は保たれていた。病変が1年前よりも大きくなっていたこと、頂部に発赤陥凹を有していたことから、診断的治療を兼ねてESD(endoscopic submucosal dissection)にて腫瘍核出術を施行した。新鮮標本では病変の表面は正常粘膜で覆われ、頂部はビランを伴っていた。固定標本の割面では腫瘍は白色調であった。最終診断は. plasmacytoma, LM(-), VM(-),13×11 mm, M, Gre-Antであった。56歳時の右下顎骨形質細胞腫と組織像が同じであることから、右下顎骨形質細胞腫の胃転移と診断した。ESD後6ヶ月経過しているが、局所再発や他部位への再発は認めていない。

<結語>本例は、右下顎骨形質細胞腫と胃形質細胞腫がそれぞれ独立に発生した、つまりdouble primaryの可能性が考えられるが、両病変の組織像が同じであること、胃の病変がSMT様の形態で出現したことから右下顎骨形質細胞腫の胃転移と診断した。今回はESDにて一括完全切除し局所制御可能であったが、今後も胃を含め他部位に発生する可能性があり、注意深く経過観察を行なう必要があると思われた。