日本消化器内視鏡学会甲信越支部

11.早期胃癌直下に多発粘膜下嚢胞を合併した2例

山梨大学医学部付属病院第一外科
中山裕子 ,河野浩二, 和田啓一, 河口賀彦, 須貝英光, 藤井秀樹

早期胃癌直下に多発粘膜下嚢胞を認めた2例を経験したので文献的考察を加え報告する。

症例1)は79歳男性。2007年1月、近医における上部消化管内視鏡検査(以下、GF)にて胃角部に高分化型管状腺癌の診断を受け、SM浸潤が疑われたため手術施行目的に当科入院となった。CTにて有意な転移所見は認めず、また、GF、超音波内視鏡検査(以下、EUS)を施行したところ、胃角部小弯に中心陥凹を伴った隆起性病変(0-Ua+UC)を認め、超音波検査では同部位に顆粒状の隆起性病変と病変部粘膜下層に嚢胞性変化を認めた。粘膜下嚢胞を伴う早期胃癌(0-Ua)、深達度M(疑)との診断に至った。幽門保存胃切除術を施行、切除標本では高分化型管状腺癌、深達度Mの病理組織学的診断を得た。症例2)は72歳男性。2002年7月に近医で施行されたGFにて胃体下部小弯から胃角部近位前庭部に隆起性病変を認め精査目的に10月、当院第一内科入院となった。CTにて有意な転移所見認めずGFでは胃角部から前庭部にかけて小弯側に一部発赤を伴った0-T病変を認め、さらに幽門側前壁にやや発赤した0-Ua病変が認められた。0-T病変に対しEUSを施行したところ病変部直下に複数の嚢胞所見が認められ粘膜下嚢胞を伴う早期胃癌(0-T)、深達度M(疑)との診断に至った。幽門側胃切除術を施行、切除標本では2つの病変が認められ、双方とも高分化型腺癌、深達度Mの病理組織学的診断を得た。早期胃癌に対するEUS検査の実施により多発粘膜下嚢胞を併存する症例が散見される。粘膜下嚢胞の存在は内視鏡検査における肉眼診断、特に深達度診断に影響を与えるため、EUSの補助診断が有用な情報として役立つと考えられた。