日本消化器内視鏡学会甲信越支部

7.EMR後リンパ節転移陽性にて胃切除が施行された早期胃癌の2例

新潟県立がんセンター新潟病院、外科
中川 悟, 梨本 篤, 藪崎 裕, 野村達也, 瀧井康公, 土屋嘉昭

 早期胃癌に対する内視鏡的粘膜切除術(EMR)後にリンパ節転移にて胃切除を施行した2症例を経験したので報告する。症例1:78歳、女性。平成18年12月の人間ドックにて胃穹窿部に隆起性病変を指摘された。内視鏡検査にて約3cmの0-I型を認め、生検にてGroupV (por1)であった。粘膜(M)癌との診断にてEMRが施行された。病理診断はpSM2, 脈管侵襲および切除断端陽性であり、腹部CT検査にて膵尾部〜脾門部に1cm大のリンパ節が認められ転移陽性と考えられた。切除目的に当科を紹介受診し、胃全摘、膵脾合併切除、D2リンパ節郭清を施行した。膵尾部から脾門部にかけてリンパ節が腫大しており、組織学的にも転移と診断された。術後経過は順調で術後14日目に退院し、現在外来にて術後補助療法を施行中である。症例2:65歳、男性。平成18年8月の検診にて血清アルカリフォスファターゼが高値なため近医にて精査し、腹部CT検査にて胃小彎リンパ節の腫大を認めた。内視鏡検査にて、胃角小弯に0-IIa+IIc型を認め、生検にてGroupV(tub1)であった。M癌との診断で12月にEMRを施行した。病理診断では、腫瘍径11mm、深達度M、切除断端陰性であった。CT検査にて胃小彎側のリンパ節の増大を認めたため転移と診断し切除目的に当科を受診した。術中、リンパ節の迅速診断にて胃癌の転移と診断され、幽門側胃切除とD2リンパ節郭清を施行した。病理診断では、No.3リンパ節に転移を認め、切除胃にもEMR scar近傍にM癌(9mm)が遺残していた。術後経過は順調で術後11日目に退院した。原発巣がEMR可能症例においてもリンパ節転移の可能性はある。現在胃癌取扱い規約を改訂中であるが、内視鏡治療の適応決定には慎重な態度が必要であり、術前診断精度のさらなる向上に期待したい。