日本消化器内視鏡学会甲信越支部

4.胃壁内転移をきたした食道表在癌の一例

済生会新潟第二病院 消化器科
関慶一, 太田宏信, 上村博輝, 今井径卓, 石川達, 渡辺孝治, 吉田俊明, 上村朝輝
同 外科
武者信行
同 病理検査科
石原紀子

表在型食道癌の胃壁転移は、極めて稀とされている。今回経験した症例を若干の文献的考察を含め報告する。

症例は75歳の女性。2006年9月20日に、近医において検診を目的とした上部消化管内視鏡検査を受けたところ、胃噴門部に5cm大の粘膜下腫瘍を指摘された。このため、精査、加療を目的に9月25日に当科へ紹介された。同日の当院での上部消化管内視鏡検査では、前医で指摘された胃病変の他に、食道において切歯列より27cm付近に、0Ucの発赤面が認められた。ルゴール散布にて同部は不整な不染帯を呈し、生検で扁平上皮癌が認められた。また、この周囲にも淡染帯や小不染帯が散在して認められたため、多発性食道癌が疑われた。胸腹部CT検査では胸腔内にリンパ節腫大は認められず、胃病変は胃壁と同等の造影効果を認める充実性腫瘤であった。

術前診断として多発性表在型食道癌と胃GISTの合併と考え、当院外科へ紹介の上10月23日に食道胃噴門側切除術を施行した。病理検査では食道病変は10mm大の深達度m3、中分化から低分化の扁平上皮癌で、胃粘膜下腫瘍は同様の組織型の扁平上皮癌の転移と診断された。

食道癌が小病変であっても、胃病変を伴う場合には転移も考慮する必要があると考えられた。