日本消化器内視鏡学会甲信越支部

2.EMRにて治癒切除しえた再発性下咽頭癌の1例

信州大学付属病院・消化器内科
須藤貴森, 児玉 亮, 長屋匡信, 張 淑美, 松田賢介, 金子靖典, 北原桂, 須澤兼一, 白川晴章, 新倉則和
信州大学付属病院・内視鏡診療部
赤松泰次

今回我々はEndoscopic mucosal resection(EMR)にて治癒切除しえた再発性下咽頭癌の1例を経験したので報告する。症例は57歳男性。2006年6〜8月に下顎歯肉悪性腫瘍の手術(気管切開、両側頚部廓清術、下顎歯肉悪性腫瘍切除、下顎骨区域切除)と咽頭癌に対する放射線化学療法を受け、以後当院耳鼻科で経過観察されていた。2007年1月に喉頭鏡検査で新たに左下咽頭に径6mmの小隆起性病変を指摘され、生検で扁平上皮癌と診断されたため、当科へ紹介された。病変部を拡大観察すると拡張した口径不同の血管を認めたが、病変は隆起部分に限局していた。食道にはまだらなヨード染色不良帯を認めたが、明らかな不染帯はなかった。同年3月に全身麻酔下で先端透明キャップを用いてEMR(吸引法)を行った。切除標本は17×12mm、病変の大きさは6×6mmで肉眼型0-Tp、扁平上皮癌、ly0、v0、切除断端は陰性であった。最深部は不規則な飛び出しを伴ったわずかな間質浸潤がみられた。頭頸部悪性腫瘍には食道扁平上皮癌をしばしば合併することが知られているが、経過観察の際には食道だけでなく中下咽頭の観察も重要と考えられた。