日本消化器内視鏡学会甲信越支部

69. クローン病回腸膀胱瘻に対し抗TNF-α抗体を投与した1例

山梨大学 医学部 第1内科
池本 剛大、山口 達也、浅川 幸子、松井 啓、花輪 充彦、深澤 光晴、植竹 智義、大高 雅彦、大塚 博之、佐藤 公、榎本 信幸

症例は47歳、男性。2004年に発症したクローン病で当科に通院中。低残渣食、経腸栄養療法、メサラジンにて治療中であった。約2ヶ月間下腹部痛が続き、2006年1月17日よりステロイド内服を追加して下腹部痛は軽快していた。1月29日、突然の下腹部痛と残渣の混入した糞尿、気尿を認め腸管膀胱瘻、尿路感染症の診断で入院。絶食、抗生物質での治療を開始した。入院時のCDAIは144であった。小腸造影で以前から指摘されていた回腸狭窄部と膀胱間に瘻孔を生じているのを認めた。糞尿、尿路感染は改善したが依然として気尿が続いていた為、回腸膀胱瘻閉鎖を目的として2月15日、3月1日の2回、インフリキシマブ5mg/kgを投与した。投与後、約2週間で気尿も完全に消失、低残渣食、経腸栄養を再開してもイレウス症状なく、4月1日退院となる。退院後の小腸造影では回腸膀胱瘻は閉鎖していた。しかし4月9日腹部膨満感の後、突然糞尿、気尿の再発あり入院となる。絶食にて糞尿、気尿は消失。4月19日の小腸造影では瘻孔は盲端となり閉鎖していたが、回腸狭窄による腸管内圧の上昇が瘻孔再発に影響を及ぼしていると考え、外科にて小腸瘻孔切除、小腸部分切除、狭窄部拡張術を行った。術後は経過良好で退院した。近年までクローン病による腸管膀胱瘻に対して外科的治療を選択することが多かったが、クローン病治療に抗TNF-α抗体(インフリキシマブ)の選択肢が加わり、腸管膀胱瘻に対して抗TNF-α抗体を投与した報告が散見されるようになった。本症例では一時的な瘻孔閉鎖の後、すぐに瘻孔再発をきたしたが、腸管膀胱瘻に対して抗TNF-α抗体の投与が有効であったとする報告もある。本症例を含む報告例をまとめ、文献的考察を加え報告する。