日本消化器内視鏡学会甲信越支部

68. 原因不明消化管出血に対し、緊急ダブルバルーン内視鏡にて診断した出血性メッケル憩室内視鏡腫瘍の1例

佐久総合病院 胃腸科
浜内 諭、堀田 欣一、小山 恒男、宮田 佳典、友利 彰寿、高橋 亜紀子、北村 陽子、篠原 知明、古立 真一、山里 哲郎、新井 陽子
佐久総合病院 外科
石川 健、植松 大

〔はじめに〕近年、ダブルバルーン内視鏡(DBE)の開発により、これまで診断が困難であった小腸病変に対して内視鏡的な診断、処置が可能となってきた。今回われわれは、出血源不明の消化管出血に対して緊急DBEを実施し、出血性メッケル憩室と診断した1例を経験したので報告する。〔症例〕10代後半、男性。血便、腹痛のため近医を受診し、上部消化管内視鏡検査にて出血源を認めなかった。精査のため前医に紹介入院となり、下部消化管内視鏡検査にて大腸に出血源を認めなかったが、終末回腸に新鮮血を認めた。また入院時Hb6.1g/dlと高度の貧血を認めたため、消化管出血源の精査目的で、当院に転院となった。入院当日に経口的緊急DBEを施行したが出血源は同定できなかった。第2病日に経肛門的DBEを施行し、回盲弁より約1mの位置に憩室を認め、メッケル憩室と診断した。憩室内部には瘢痕を伴う浅い潰瘍を認め、潰瘍底からわずかな出血を認めた。しかし、明らかな露出血管は無く、自然止血したため止血処置は施行しなかった。インジゴカルミン散布にて潰瘍周辺に絨毛構造が観察され、明らかな異所性胃粘膜の所見は認めなかった。第6病日にTc99mシンチグラフィーを実施したが、異常集積は認めなかった。以上より出血性メッケル憩室内潰瘍と診断し、第8病日に腹腔鏡補助下メッケル憩室切除術を施行した。術中所見として回盲部から口側110cmの部位の腸間膜側と対側の間に釣鐘型の4cm大の憩室を認めた。術後経過は良好で、第13病日に退院となった。病理組織学的には真性憩室であり、憩室内部には、Ul-III〜IVの潰瘍瘢痕及び、びらんを認めた。また潰瘍周囲に限局して幽門腺を認めた。以上の所見よりメッケル憩室の異所性胃粘膜に発症した潰瘍と診断した。〔結語〕緊急DBEにて、原因不明の消化管出血源をメッケル憩室内潰瘍と診断し、適切な治療に結びつけることができた。DBEは原因不明消化管出血の早期診断に有用であった。