日本消化器内視鏡学会甲信越支部

67. ダブルバルーン小腸内視鏡(DBE)にて診断し、治療効果が確認できたintestinal T cell lymphomaの1例

独立行政法人 国立病院機構 松本病院 消化器科
長屋 匡信、宮林 秀晴、松林 潔
独立行政法人 国立病院機構 松本病院 内科
古田 清
独立行政法人 国立病院機構 松本病院 外科
小池 祥一郎
独立行政法人 国立病院機構 松本病院 中央検査科科
中澤 功

症例は87歳、男性。胃潰瘍で胃亜全摘の既往あり。当院泌尿器科で前立腺癌の抗アンドロゲン療法後自己判断で通院を中止していた。2006年2月頃になり腰痛が出現し、鎮痛剤などでも徐々に増悪するため泌尿器科を受診。骨転位を疑われ骨シンチを施行したが転移を示す所見はなく、痛みの精査のため同科に入院。入院時に著明な貧血・低アルブミン血症を認め、4月12日タール便が出現したため、同日緊急上部消化管内視鏡検査を施行。十二指腸びらんからの出血があったため、APC焼灼による止血を施行し当科へ転科。腹部CTなどでは異常を認めなかったが、その後も貧血が持続し左下腹部痛が出現した。小腸造影で空腸〜回腸の多発陥凹性病変が認められたためDBEを施行した。内視鏡所見では多発性のびらん・周辺隆起を伴う陥凹・潰瘍性病変を認め、免疫組織染色を含めた組織検索でintestinal T cell lymphoma と診断した。高齢であり、全小腸に散在する病変であることから化学療法(HOPE療法)を選択した。治療開始1ヶ月後一時中心静脈カテーテルからの重症MRSA敗血症を合併したが回復し、4ヶ月後のDBE再検でリンパ腫病変の改善傾向が認められた。腹部CTなどで診断し得なかった小腸病変をDBEにて確診し、治療効果判定が可能であったことは今後の消化管リンパ腫病変の診断と治療に大きな影響を与えるものと考えられる。