日本消化器内視鏡学会甲信越支部

66. IgG4関連前立腺炎と多彩な肺病変を合併し、ステロイド治療が著効した自己免疫性膵炎の一例

信州大学 医学部 消化器内科
羽場 真、浜野 英明、梅村 武司、村木  崇、金子 靖典、松田 賢介、尾崎 弥生、新倉 則和、清澤 研道
国立病院機構中信松本病院 消化器内科
菅  智明、小林 正和
信州大学 健康安全センター
川  茂幸

【目的】自己免疫性膵炎は血清IgG4高値を特徴とし,多彩な膵外病変を高頻度に合併し,病理学的には膵外病変も膵病変と同様にIgG4陽性形質細胞の多数浸潤を認める. IgG4関連前立腺炎と多彩な肺病変を合併し,ステロイド治療にてこれら膵外病変も著明に軽快した自己免疫性膵炎を報告する.【症例】67歳男性.主訴,黄疸.6ヶ月前から乾性咳嗽,2ヶ月後には頻尿・残尿感が出現し近医にて前立腺肥大症として加療されたが軽快しなかった.さらに数週間後,無痛性黄疸が出現したため紹介入院となった.膵はびまん性に腫大,膵管は不整狭細化像,胆管は下部にて狭小化し閉塞性黄疸を呈していた.胆管生検ではリンパ球・形質細胞の多数浸潤を認め,IgG4陽性形質細胞も多くみられた.血清IgG4は1170mg/dlと異常高値であった.また残尿感,頻尿,尿線途絶など前立腺症状は著明で,国際前立腺症状スコア(International Prostate Symptom Score; IPSS)は23/35点であった. MRIでは前立腺は腫大し,通常はT2強調像にて著明な高信号を呈する辺縁域が不明瞭な信号低下を認め,造影にて緩徐に濃染された.経直腸前立腺生検ではリンパ球・形質細胞の著明な浸潤を認め、多くのIgG4陽性形質細胞も確認された.一方,胸部CTでは両肺野に小葉間隔壁や気管支血管束の肥厚,結節影〜粒状影,葉間胸膜の不整な肥厚と多彩な肺病変を認め,縦隔・肺門のリンパ節腫大もみられた. Gaシンチでは膵,肺門部および両肺野,前立腺に集積を認めた.以上より,IgG4関連前立腺炎と多彩な肺病変を伴う自己免疫性膵炎と診断し,ステロイド治療を開始した.膵病変,下部胆管狭小化,肺・前立腺病変はすべて軽快し,咳嗽も消失,IPSS 3/35点と前立腺症状も改善を認めた.【結語】自己免疫性膵炎に合併する膵外病変は多彩であるが,IgG4関連前立腺炎や肺病変も新たな膵外病変として認識する必要がある.