日本消化器内視鏡学会甲信越支部

64. 副甲状腺機能亢進症による高Ca血症によって発症した、若年性重症急性膵炎の一例

新潟大学医歯学総合研究科 消化器内科学分野
坪井 清孝、青柳 豊、佐藤 祐一、五十嵐 正人、竹内 学、高村 昌昭、横山 恒
新潟大学医歯学総合研究科 腎・膠原病内科学講座
近藤 大介、大森 健太郎、小川 麻、竹山 綾
新潟大学医歯学総合研究科 消化器・一般外科学分野
小山 諭、伏木 麻恵
新潟大学医歯学総合研究科 分子・診断病理学分野
味岡 洋一

症例は15歳女性。2006年5月7日、上腹部痛、嘔吐を主訴に近医を受診。血清アミラーゼ高値、血清Ca異常高値、腹部単純CTにて膵腫大と膵周囲に液体貯留を認め急性膵炎の診断で当院救急搬送された。腹部造影CT上、CT grade III、急性膵炎重症度スコア2点で急性膵炎Stage分類はStage2(重症I)であった。飲酒歴や外傷の既往はなく、画像上胆石等も認めないことから、本症例の膵炎発症と血清Ca異常高値との関連が疑われた。膵炎に対し、大量補液と蛋白分解酵素阻害薬、抗生剤の点滴静注を開始したが症状改善なくアシドーシスも進行したため、同日より上記薬剤の持続動注療法を開始した。高度の高Ca血症に対し、ビスホスフォネート製剤、カルシトニン製剤の併用を開始したが改善なく、第3病日より低Ca透析液を使用した血液透析(low-Ca HD)を行った。同時に膵炎に対し、持続血液濾過透析(CHDF)、選択的消化管除菌を追加開始したところ、膵炎は改善傾向となった。血清Ca値はlow-Ca HD後一過性に減少するも完全正常化には至らず、血清Ca値の再上昇に伴って膵炎の再燃傾向を認めたため、同治療を中止できない状況であった。治療に平行して副甲状腺機能について検索を行ったところ、血液検査にてintact-PTHの高値、副甲状腺シンチにて左頚部に異常集積を認め、副甲状腺機能亢進症に続発した重症急性膵炎と診断した。頻回のlow-Ca HDを継続して血清Ca値のコントロールを行いつつ、膵炎の沈静化を行った後、第18病日に副甲状腺腫瘍摘出術を施行した。副甲状腺は1腺のみの腫大で、病理診断は腺腫であり悪性の部分は認めなかった。術後翌日より血清Ca値は正常化し、外来経過観察中であるが、血清Ca値の上昇や膵炎の再燃はなく、腹部CTで一時見られた仮性膵嚢胞も消失し異常を認めていない。副甲状腺機能亢進症による高Ca血症によって発症した、若年性重症急性膵炎の一例を経験した。高Ca血症に起因する急性膵炎のメカニズムについては諸説あり詳細は明らかでないが、本症例ではlow-Ca HDで血清Ca値をコントロールすることによって膵炎のさらなる重症化を防ぎ得たと考えられる。