症例は75歳女性。2006.4月、腹部膨満感が出現。腹部CTで膵尾部に接する10cm大の腫瘤を認め、5月10日当科入院。腫瘤の性状は多房性嚢胞性であり、一部充実性部分を伴うが主膵管の拡張はなく、膵粘液性嚢胞腫瘍が疑われ手術の方針となった。5月23日、腹痛が増強。腹部CT上、嚢胞破裂が疑われ緊急手術となった。開腹時、左横隔膜下主体に暗茶色の液体貯留を認め腫瘍の破裂と考えられた。明らかな播種性病変やリンパ節腫脹はなく、膵体尾部切除術・脾切除術が施行された。病理所見は腫瘍の大部分は粘液性嚢胞腺腫の像だったが、一部多発性に腺癌成分が認められた。嚢胞壁への浸潤はなく、腫瘤破裂は癌の被膜浸潤ではなく粘液貯留によるものと考えられた。膵粘液性嚢胞腫瘍の自然破壊は比較的まれと考え報告する。