日本消化器内視鏡学会甲信越支部

55. 上部消化管内視鏡検査に於けるプロフォールの有用性

昭和伊南総合病院消化器科
一瀬 泰之、堀内 朗、梶山 雅史、張 淑美
昭和伊南総合病院小児科
中山 佳子

【目的】近年、日本でも健常人を対象としたスクリーニング目的の上部消化管内視鏡検査(EGD)において鎮静剤の使用を希望する被検者が多くなった。欧米では急速な鎮静と良質な覚醒をもたらす静脈麻酔薬プロポフォールの麻酔医に依存しない使用が増加している。今回、プロポフォールとミダゾラム使用時のEGD検査中および検査後の安全性について検討した。【方法】方法1:対象は当院にて2年間にスクリーニング目的にプロポフォ−ル(70歳未満40mg、70-89歳30mg、90歳以上20mg )を静脈内投与しEGDを施行した8021例(男4832例、平均年齢57.2歳)。全例にSpO2のモニタリングを施行し、注射後30分の覚醒状態と偶発症について検討した。方法2:70 歳未満の60例をプロポフォール 40 mg(N=30)あるいはミダゾラム 4 mg(N=30)を静脈注射してEGDを施行する2群に振り分け、被検者満足度、運動作業能力の回復状態と薬剤の血中濃度について検討した。運動作業能力は自動車運転シミュレーター(DS-20、三菱プレシジョン、東京) を使用して評価し、薬剤の血中濃度は注射後30、60、120分に測定した。【成績】結果1:検査中、SpO2が90%以下に低下し酸素投与を必要とした症例を1.1%(86例)に認めたが、99.7%の症例が注射後30分で検査前の状態に回復し、偶発症は1例も起きなかった。結果2: 10-point VASを使用した満足度の評価では両群に有意差を認めなかった (8.3vs.8.6 p=0.68) 。プロポフォール群では、全例、注射後60 分(平均血中濃度は67ng/ml)で注射前の運転レベルに回復したが、ミダゾラム群では53%(16 例)の症例が投与後120 分でも注射前の状態に回復しなかった。【結論】スクリーニング目的のEGDにおいて、プロポフォール は検査中のみならず検査後の安全性を考慮すると従来の鎮静剤に代わる有用な鎮静剤と考えられた。