日本消化器内視鏡学会甲信越支部

51. t(11;18)染色体転座を認め、放射線療法を第一選択としたHelicobacter pylori陽性胃MALTリンパ腫の1例

信州大学 消化器内
岩谷 勇吾、松田 賢介、須澤 兼一、北原 桂、白川 晴章、井上 勝朗、横沢 秀一、金子 靖典、村木 崇、新倉 則和、清澤 研道
信州大学 内視鏡診療部
赤松 泰次、尾崎 弥生

症例は55歳、女性。近医で上部消化管内視鏡検査(EGD)を受け、胃MALTリンパ腫が疑われたため平成18年2月当科へ紹介された。当院で施行したEGDで、胃体上部大弯にfoldの中断を伴った褪色調粘膜を認めた。同部位の生検病理組織で小型異型リンパ球の浸潤を認め、免疫組織染色にて胃MALTリンパ腫と診断された。CT、FDG-PET、骨髄穿刺、下部消化管内視鏡検査を行ったが明らかな他部位への浸潤は認めず、StageI胃MALTリンパ腫と診断した。鏡検および培養検査でHelicobacter pylori(HP)感染を認め、当初HP除菌療法を行なう予定であった。ところが、生検標本を用いた遺伝子検査でt(11;18)転座(API2-MALT1キメラ遺伝子)を認めた。API2- MALT1キメラ遺伝子が陽性であったことから、HP除菌療法に先行して放射線療法(総線量30Gy)を施行した。3ヶ月後のEGDでは内視鏡所見は改善し、生検組織所見でリンパ腫細胞の消失を認め完全寛解と考えられた。その時点でHPは依然として陽性であったため、本人の希望もありさらにHP除菌療法を追加した。API2-MALT1キメラ遺伝子陽性の胃MALTリンパ腫はHP除菌療法に抵抗性を示すことが知られており、このような症例に対して除菌療法を行なうことは有効な治療法の開始時期を遅らせる結果となる。治療前にAPI2-MALT1キメラ遺伝子の有無を確認することは胃MALTリンパ腫の治療方針の決定に重要である。