症例は80代女性.B型肝硬変のため当科外来で加療されていた.
2004年8月行われた上部消化管内視鏡検査で幽門前庭に早期胃癌0-IIcを指摘された.同年10月内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection,以下ESD)を行われたが,幽門輪から十二指腸側の剥離が困難であり,分割切除となった.病理学的に治癒判定不能とされ,以後経過観察されていた.
6ヵ月後の上部消化管内視鏡検査では瘢痕部に発赤をみとめたが,粘膜は再生性変化のみで,生検でも腫瘍成分を認めなかった.
18ヵ月後の内視鏡再検で切除部は周囲に隆起を伴う陥凹性病変として観察された.陥凹からの生検でGroup Vと診断された.
深達度sm以深と診断し,当院外科にて幽門側胃切除を行われた.病理学的には筋層に一部浸潤した進行胃癌だった.
教訓的な症例と考え報告する.