日本消化器内視鏡学会甲信越支部

49. 胃腫瘍に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の当院における導入期の現状

新潟県立中央病院 内科
平野 正明、湯田 知江、丸山 正樹、横山 恒、小堺 郁夫、藤原 敬人
新潟大学医歯学総合病院 消化器内科
津端 俊介

【目的】早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が本年4月より保険収載となり、その高い根治性からESDが標準治療化されつつある。その一方で、出血・穿孔などの合併症、手技的な難易度の高さから導入にあたっては高いハードルがあるのも事実と思われる。ESDのエキスパートがいない一般病院である当院のESD導入期の現状について検討した。【対象・方法】当院でのESDの適応基準は、胃腺腫と胃癌学会ガイドライン病変およびいわゆるガイドライン適応拡大病変を原則としているが、さまざまな理由により適応外病変も行うことがある。当院では、2005年3月よりESDを導入し2006年9月までに100例を実施しており、一括切除率や一括治癒切除率等について検討した。【結果】当院で5例以上のESDを行った術者は4名であり、適宜、国立がんセンター中央病院への見学や佐久ESDライブデモ等への参加を行った。主に使用するデバイスは各術者によって異なり、ITナイフが2名、Flexナイフが1名、Hookナイフが1名であった。ESD症例の内訳は、胃腺腫が26%、適応内病変が48%、適応拡大病変が15%、適応外病変も11%含まれていた。当院全体での病変の一括切除率は87%、一括治癒切除率は74%であったが、各術者によるばらつきが認められた。切除標本径は35.9±14.4mm、腫瘍径は18.0±14.6mm、施行時間は106±76分であった。一括治癒切除し得た最大径は11cmの病変であり、270分を要した。合併症については、穿孔を6%に、後出血を5%に認めた。ESD導入当初の穿孔症例が手術になった以外は保存的に改善した。【結論】ESDは難易度の高い手技であるが、ライブデモへの参加や先進施設への見学などにより当院のような一般病院での導入も可能であった。しかし、一括切除率や一括治癒切除率はまだ満足すべき結果ではなく、また各術者による技術格差も認められ、今後院内での更なる手技の向上と標準化が必要と考えられた。