日本消化器内視鏡学会甲信越支部

48. 経過中に形態変化を認めEUS-FNAが有用であった胃カルチノイドの1例

長野市民病院 消化器内科
丸山 雅史、長谷部 修、児玉 亮、立岩 伸之、越知 泰英、長田 敦夫
長野市民病院 消化器外科
三上 和久、宗像 康博
長野市民病院 臨床病理科
保坂 典子
千曲中央病院 内科
草場 亜矢子、窪田 芳樹、宮林 千春

症例は78歳男性。平成18年3月30日総胆管結石による胆管炎で近院入院し4月13日EPBDによる結石除去が施行された。4月7日のスクリーニング上部消化管内視鏡検査にて胃体上部後壁に2型様病変と前庭部に0-IIc病変を認め、腹部造影CTでは2型様病変は壁外浸潤を疑う充実性腫瘤として描出された。0-IIc病変に対して5月18日ESDが施行された。2型様病変は経過とともに形態変化を認め、計4度にわたる胃生検ではgroupIIIの結果であった。確定診断目的で5月21日当科紹介となり、5月22日EUS-FNAを施行した。胃体上部後壁に表面に発赤陥凹を伴なったなだらかな隆起をもつ2cm大の粘膜下腫瘍を認め、EUSでは3層から4層にかけて隔壁構造を伴ったhypoechoic massとして描出された。EUS-FNA生検組織中にはendocrine cell nestを認めた。Endocrine tumorないしepithelioid GISTの診断で6月1日腹腔鏡下胃局所切除術を施行した。腫瘍組織はchromogranin A陽性で好酸性の小型円形細胞により構成されておりcarcinoidと診断、進達度はss、静脈浸襲(+)であった。なお抗胃壁細胞抗体は陰性、血中ガストリンは290pg/mlと軽度上昇でありA型胃炎やMEN1、Zollomger-Ellison syndromeを合併しないsporadic typeのcarcinoidと診断した。本例は術前診断が困難であったが、retrospectiveにはEUS-FNAの組織診断が有用であったこと、経過中に内視鏡的な形態変化を認めたことから貴重な症例と考え報告する。