日本消化器内視鏡学会甲信越支部

42. 開腹手術にて診断し得た腹腔内結核性リンパ腫炎の1例

山梨県立中央病院 消化器内科
辰巳 明久、小嶋 裕一郎、三澤 綾子、鈴木 洋司、望月 仁、廣瀬 雄一、高相 和彦
山梨県立中央病院 外科
阿部 徹
山梨県立中央病院 病理
小山 敏雄

症例:58歳、女性。主訴:心窩部痛。既往歴:56歳時に肺結核で治療。現病歴:2006年6月下旬に心窩部痛あり。このため近医を受診し腹部超音波検査にて膵頭部腫瘤が疑われたため、当科紹介入院となった。腹部超音波検査では膵頭部に57×37×44 mmのhypoechoic massを認め、内部に石灰化を伴っていた。腹部CT検査では膵頭部の頭側に大きさ4.5×3 cmの腫瘤を認め、膵頭部は尾側に圧排されていた。腫瘍は被膜を有し一部に石灰化を伴っていた。被膜および内部の一部に造影効果を認めた。他の部位は液状を呈していた。腹部MRIでは、腫瘍は比較的限局性で浸潤は認められなかった。内部はcystic lesionとsolid componentが混在しており、造影すると蜂巣状にsolid componentが造影された。MRCPにて主膵管、胆管に異常所見は認められなかった。血管造影検査では腫瘤に栄養血管はなく、透亮像として認められた。2006年1月の人間ドックにて同腫瘤は指摘されておらず急速に増大したことから悪性腫瘍も考えられ、同年8月開腹手術が行われた。腫瘤は肝外側区域、膵、肝十二指腸靱帯に囲まれ7cm大で、肝、膵との剥離操作中に被膜が破れ膿の流出を認め、膿瘍と診断した。ドレナージを行い終了した。病理組織検査では著しい凝固壊死を伴う肉芽腫性炎症所見を認め、ラングハンス型巨細胞を伴っていた。膿の結核菌PCRにて陽性であったため、結核性リンパ節炎と診断した。以上、診断に苦慮した結核性リンパ節炎を経験したので、文献的考察を加えて報告する。