回収に工夫を要した上部消化管異物の3例を報告する。【症例1】55歳女性。統合失調にて入院加療中に自殺目的で南京錠を飲み込みA病院へ紹介された。内視鏡的摘出術を試みたが異物が噴門部に引っかかり、回収できなかった。外科的摘出術が検討されたが、再度内視鏡的除去術を試みることとし当科紹介された。2チャンネルスコープの先端にゴム製のスカートを装着し、2本のスネアで南京錠を把持し、スカートの中に包み込むようにして回収した。回収時わずかに接触性出血を認めたが、裂傷や穿孔は認めなかった。【症例2】心窩部痛のためB病院にて上部消化管内視鏡検査を受けたところ、胃内に約8×6cm大の胃石と、胃角小弯、前庭部大弯にA2 stageの胃潰瘍を認め、内視鏡的胃石除去術の目的で当科紹介された。まず水浸下に電気水圧破砕法で胃石の外郭を破砕した後、把持鉗子、スネアを用いて細かく砕き、回収用ネットで回収した。【症例3】77歳男性。真菌性脊椎炎にて当院整形外科入院加療中、薬のカプセルを誤ってPTP包装ごと飲み込んでしまい当科紹介された。PTPは切歯より30cmの部位に存在し、把持鉗子にて先端キャップ内に収納、さらにオーバーチューブ内を通して回収した。上部消化管異物の多くは内視鏡的除去術が可能であるが、異物の大きさや形状によっては工夫が必要と考えられた。