日本消化器内視鏡学会甲信越支部

41. 回収に工夫を要した上部消化管異物の3例

信州大学 医学部 附属病院 消化器内科
松田 賢介、赤松 泰次、小松 通治、尾崎 弥生、北原 桂、白川 晴章、須澤 兼一、井上 勝朗、金子 靖典、村木 崇、横沢 秀一、新倉 則和、清澤 研道

回収に工夫を要した上部消化管異物の3例を報告する。【症例1】55歳女性。統合失調にて入院加療中に自殺目的で南京錠を飲み込みA病院へ紹介された。内視鏡的摘出術を試みたが異物が噴門部に引っかかり、回収できなかった。外科的摘出術が検討されたが、再度内視鏡的除去術を試みることとし当科紹介された。2チャンネルスコープの先端にゴム製のスカートを装着し、2本のスネアで南京錠を把持し、スカートの中に包み込むようにして回収した。回収時わずかに接触性出血を認めたが、裂傷や穿孔は認めなかった。【症例2】心窩部痛のためB病院にて上部消化管内視鏡検査を受けたところ、胃内に約8×6cm大の胃石と、胃角小弯、前庭部大弯にA2 stageの胃潰瘍を認め、内視鏡的胃石除去術の目的で当科紹介された。まず水浸下に電気水圧破砕法で胃石の外郭を破砕した後、把持鉗子、スネアを用いて細かく砕き、回収用ネットで回収した。【症例3】77歳男性。真菌性脊椎炎にて当院整形外科入院加療中、薬のカプセルを誤ってPTP包装ごと飲み込んでしまい当科紹介された。PTPは切歯より30cmの部位に存在し、把持鉗子にて先端キャップ内に収納、さらにオーバーチューブ内を通して回収した。上部消化管異物の多くは内視鏡的除去術が可能であるが、異物の大きさや形状によっては工夫が必要と考えられた。