日本消化器内視鏡学会甲信越支部

37. 総胆嚢欠席を契機に発見され、経口胆道鏡が診断に有用であった胆管癌の1例

長野市民病院 消化器科
越知 泰英、長谷部 修、立岩 伸之、児玉 亮、丸山 政史、長田 敦夫
長野市民病院 外科
関 仁誌、宗像 康博
長野市民病院 病理
保坂 典子

症例は70歳女性。糖尿病にて近医通院中であったが、2006年6月に受けた健診で肝機能障害を指摘されたため、7月に当科へ紹介された。それまで明らかな腹痛や発熱は認めていなかった。精査目的に腹部CT検査を施行したところ総胆管結石を認めたため、同年8月に結石除去目的にERCPを施行した。φ12mm大の総胆管結石を、EST施行後に除去した。その際、胆管造影にて下部胆管に一見膜様の限局性狭窄を認めたため同部位の細胞診と生検を施行したところ、細胞診にてclassV、生検にて癌が疑われた。胆管像は癌としての所見に乏しく、また進展範囲も不明であったため、更に経口胆道鏡(CHF-BP240)検査を行った。乳頭部から胆嚢管分岐部周辺にかけて丈の低い隆起性病変が拡がり、その一部には亜有茎で乳頭状の隆起部分を伴っており、腫瘍性病変と考えられた。膜様の限局性狭窄はIDUSでは胆管壁肥厚として認識されたが、胆道鏡では非腫瘍性の要因により限局性に狭窄した部分に、腫瘍が表層進展したものと考えられた。また肝門部は、IDUSにて壁肥厚を認めたが胆道鏡では粘膜面に明らかな異常を認めなかった。以上の所見より中下部胆管癌と診断し、同年9月に手術目的に外科へ転科した。