日本消化器内視鏡学会甲信越支部

34. IFN療法により軽快した多発肝細胞癌の1例

信州大学消化器内科
森田 進、松本 晶博、吉澤 要、田中 榮司、清澤 研道
藤森病院科
藤森 芳史

症例は62歳、男。家族歴(母 詳細不明の肝疾患)、輸血歴(-)、針治療癧(-)、刺青(-)。飲酒歴:ビール3本/日×30年間(1年前より禁酒)。50歳時に検診にて肝機能異常指摘されC型肝炎と診断された。以後放置していたが、平成16年8月再診時に腹部超音波にて肝腫瘍指摘され当科紹介受診。結膜に貧血・黄疸を認めず、腹部;肝を正中に3横指触知。辺縁は鈍、硬。くも状血管腫を認める、手掌紅斑なし、Plt 13.3×104/μl,Alb 3.5 g/dl,T-bil 0.79 mg/dl, AST 123 IU/l, ALT 193 IU/l, γ-GTP 163 IU/l, HCV-RNA 260 KIU/ml,T-AFP 58.9 ng/ml,AFP L3 58.4 % ,PIVKA2 2274 mAU/ml,食道胃静脈瘤(+)。腹部MRIにて両葉に多発するHCCを認めた。HCCが肝臓全体に広がっているため、治療の適応なしとの判断にて無治療で経過観察となった。平成17年3月、背景にあるC型肝炎の活動性を抑制する為、ペグインターフェロンα2a 180μg/週の治療を開始。同年12月の経過観察の腹部CTにて多発HCCの縮小傾向が認められたため、平成18年3月、2回のTAEを施行。その後も外来にてペグインターフェロンを継続。4月のMRIでは、右葉優位に肝両葉に多数の結節が認められたものの、明らかに縮小し、ダイナミックMRIでははっきりした腫瘍濃染は確認できなかった。TAE時に残存が疑われた小結節も、はっきりした腫瘍濃染としては認識できなかった。6月のMRIでは腫瘍サイズは更に縮小し、S7に一部腫瘍濃染像をとらえられるのみであった。腫瘍マーカーは、最高でT-AFP 15670 ng/ml,AFP-L3 76.4 %,PIVKA2 34642 mAU/ml,まで達したが9月現在T-AFP 3.8,AFP-L3 感度以下,PIVKA2 14,と正常化し,HCV RNAも陰性化している.IFN療法により腫瘍が著明に縮小した多発肝細胞癌の1例を報告する。