下腸間膜静脈−下大静脈短絡路が原因と考えられた肝性脳症、高度脂肪肝に対しBRTOを施行し改善が認められた一例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。症例は57歳女性。1999年8月に当院でガストリノーマに対し膵頭十二指腸切除術を施行された。その後再発は認めなかったが、2000年1月低アルブミン血症による浮腫を指摘され、またCTにて脂肪肝を認めるようになった。2001年3月、意識障害、羽ばたき振戦を認め、アンモニア高値(305 Nμg/dl)より、肝性脳症と考えられた。またこの時の血液検査でPlt 11万/μl、ICG R15 12.6% (K=0.151)であり肝予備能の低下が疑われた。肝生検ではhepatic fibrosisあり、アルコール性の変化が疑われた。ラクツロース、フロセミドなどの内服を開始し、その後、症状・検査所見は落ち着いていたが、2006年1月、再度意識障害を認め、肝性脳症にて入院した。その際のCTにて下腸間膜静脈−下大静脈短絡路が疑われ、肝性脳症の原因と考えられた。3月頃より、徐々にトランスアミナーゼの上昇を認め、CTでも脂肪肝の増悪を認めた。肝硬変の増悪が懸念されたため、6月28日、29日下腸間膜静脈−下大静脈短絡路に対し、BRTOを施行した。術後、合併症なく退院し、その後、トランスアミナーゼやアンモニアは正常域まで改善を認めた。また、CTでも脂肪肝の著名な改善を認めた。