日本消化器内視鏡学会甲信越支部

27. インターフェロン著効後、10年以上経過し肝細胞癌が出現した1例

市立甲府病院 内科
青木 いづみ、若宮 稔、進藤 浩子、俵 章夫、嶋崎 亮一、赤羽 賢浩
市立甲府病院 外科
巾 芳昭
うえむらクリニック
植村 一幸

【症例】55歳、男性。【既往歴・家族歴】25歳時、急性肝炎(NBNC)。飲酒歴2合/日。【現病歴】平成3年よりCH-Cで近医通院。H6年6月当院入院し、腹腔鏡所見及び病理組織からはLCの診断であったが、6月20日よりIFN-α 6MU 2週間連日+20週隔日投与を行い完全著効となった。約5年間外来で3〜6ヶ月毎に経過観察を行い、HCV-RNA陰性化が持続、画像上腫瘍の出現はみられず、以後近医に不定期で通院していた。平成18年7月倦怠感のため同医受診した際、腹部エコーとCTでS4に肝細胞癌が疑われ、8月3日当院紹介入院となった。【入院時検査所見】体重75kg(10年で5kg増加)。TP 7.3 g/dl, Alb 4.7 g/dl, TCH 205 mg/dl, TG 138 mg/dl, ChE 317 IU/l, ZTT 7.9 KU, TTT 2.8 KU, T.Bil. 0.5 mg/dl, AST 32 IU/l, ALT 38 IU/l, LDH 192 IU/l,γ-GTP 61 IU/l, ICG R15 9.8%, WBC 4500 /μl, RBC 479 /μl, Hb 16.1 g/dl, PLT 15.2万/μl, PT 97 %, AFP 2.2 ng/ml, PIVKA-2 145 mAU/ml, HBsAg (−), HBsAb (−), HBcAb (−), HCV抗体 (+), HCV-RNA (−)【入院後経過】AUS、CT、MRIで、S4に径40mm大の肝表にやや突出するHCCを認め、Angio、CTA、CTAPからも典型的なsolitary HCCの診断のもと肝内側区域切除術を施行した。組織は径40×35mmのwell differentiated hepatocellular carcinomaであった。非癌部はF2〜3 A1に軽快していた。脂肪沈着は、軽度であった。【結語】従来、インターフェロン著効例でも発癌例が存在し、著効後3年、5年、7年、10年程度の経過観察が必要であると報告されている。本例では、著効後11年3ヶ月で肝細胞癌が診断されており、著効例においても、一生涯経過観察が必要であると考えられた。