日本消化器内視鏡学会甲信越支部

25. 皮膚筋炎を合併した抗ミトコンドリア抗体陰性無症候原発性胆汁性肝硬変の1例

新潟大学大学院 医歯学総合研究科 消化器内科学分野
津端 俊介、川合 弘一、山際 訓、松田 康伸、大越 章吾、野本 実、青柳 豊

【症例】48歳女性。生来健康であったが、1995年より職場の健康診断で肝機能障害を指摘され、また同じ頃より下肢の易疲労感を自覚するようになるも放置していた。 2004年初旬より下肢の易疲労感が増悪し、また疼痛・筋力低下も伴うようになり近医を受診、さらなる精査を希望して2004年2月に当院神経内科を受診した。同科受診時、近位筋優位の筋力低下と肘部に皮疹を指摘された。 また同科施行の血清生化学検査にて胆道系優位の肝機能障害を認め当科外来紹介となった。理学所見上、軽度肝腫大とTraube三角での鼓音消失を認めたが脾は触知しなかった。 黄疸、腹壁静脈怒張は認めず、経過中、皮膚掻痒感は自覚していなかった。【当科検査所見】WBC 6630 /μL、RBC 480×104 /μL、Hb 12.6 g/dl、Ht 39.8 %、Plt 36.6×104 /μL、TP 7.5 g/dl、Alb 4.1 g/dl、γ-gl 1.8 g/dl、 GOT 62 IU/L、GPT 57 IU/L、LDH 316 IU/L、ALP 1,260 IU/L、γ-GTP 337 IU/L、T-Bil 0.6 mg/dL、D-Bil 0.1 mg/dL、CPK 664 IU/L、IgG 1,605 mg/dL、IgA 242 mg/dL、IgM 186 mg/dL。ANA、AMA、anti-M2、ASMA、抗Jo-1抗体はいずれも陰性であった。また肝炎ウイルスマーカーも陰性であった。腹部超音波検査、腹部CT検査では肝左葉の軽度腫大と軽度脾腫を認めた。上部消化管内視鏡検査では胃・食道静脈瘤は認めなかった。腹腔鏡検査にて肝左葉腫大、表面の凹凸不整、赤色パッチ、溝状陥凹を認め、生検にて慢性非化膿性破壊性胆管炎を認め、原発性胆汁性肝硬変(PBC)のScheuer 1期と診断した。 【経過】PBCに対しUDCA内服開始したところ胆道系酵素の上昇は改善傾向を示した。皮疹・下肢筋力低下に対し当院皮膚科にて皮疹部皮膚生検が施行され、皮膚筋炎と診断されたが、ステロイド内服開始にて皮膚症状および筋力低下は改善した。その後ステロイドを漸減しても同症状に増悪を認めなかった。 以後、近医にて治療継続中であるが、肝機能、皮疹、筋力低下ともに増悪なく外来通院中である。【結語】皮膚筋炎を合併した抗ミトコンドリア抗体陰性無症候性原発性胆汁性肝硬変の一例を経験したので報告する。