日本消化器内視鏡学会甲信越支部

23. 溶血性貧血をはじめとする多彩な肝外症状を合併したB型肝炎の1例

新潟厚生連 長岡中央綜合病院 消化器病センター 内科
坂牧 僚、稲田 勢介、佐藤 知巳、波田野 徹、富所 隆、吉川 明

 症例は54歳、男性。インドネシア人の妻と再婚しており、30年前に輸血歴がある。肝疾患は指摘されていなかった。2006年4月11日より発熱、下痢、全身倦怠感が出現した。4月15日他院を受診し急性肝炎が疑われたため当院に紹介された。入院時現症では発熱と頻脈、若干の低血圧、軽度の黄疸を認めた。意識は清明で、羽ばたき振戦を含め神経学的異常所見を認めなかった。肝逸脱酵素の著明な上昇と凝固能の高度低下を認め、またHBs抗原及びIgG型HBc抗体陽性よりB型慢性肝炎の急性増悪が疑われた。またBUN、クレアチニンの上昇より急性腎不全も合併していると考えられた。入院後は安静、グルコース・インスリン療法、血漿交換、ラミブジン100mgの内服を開始した。急性腎不全に対し血液透析も併用した。第25病日より貧血が徐々に進行し、高熱が出現した。第33病日に突然左側腹部に強度の腹痛が出現したため再度腹部CTを行ったところ後腹膜に血腫の形成を認めた。同日腹部血管造影を行い、腰動脈より血腫への造影剤流入を認めたが、流入血管が細かったため血管塞栓術は施行しなかった。しかし貧血は改善しないため、第35病日直接クームス試験を行ったところ陽性であり、間接優位のビリルビン上昇、臨床経過とあわせて自己免疫性溶血性貧血と診断した。同日よりラミブジンの内服中止とプレドニゾロンの内服を開始し、ヘモグロビンの上昇を認めた。再び高熱が出現するようになり、後腹膜血腫が出血の原因と考え、第75病日に血腫ドレナージを行い発熱は軽快した。また同時時期より腎機能低下、低蛋白血症および高脂血症が出現し、ネフローゼ症候群を呈したと考えられた。第103病日よりプレドニン内服量を増量し、徐々に尿中蛋白量の減少を認めている。またHBs抗原の陰性化およびHBe抗体の出現を認めており、肝逸脱酵素の再上昇など肝炎の再燃を疑わせる所見は現在までのところ出現していない。