日本消化器内視鏡学会甲信越支部

19. 胃癌大腸転移の1例

新潟県立十日町病院外科
藤森 喜毅、福成 博幸、大槻 将、設楽 兼司、林 哲二

転移性大腸癌は比較的稀であり、大腸癌全体の0.1%〜1%と報告されている。原発巣は胃が最も多いとされている。今回われわれは、異時性に発症した胃癌の大腸転移症例を経験したため、文献的考察を加え報告する。 症例は52 歳女性。平成13年他院にて胃癌に対し幽門側胃切除・Billroth I法再建(adenocarcinoma(sig), pT3(se), pN0)の既往有り。術後3年間内服による化学療法が行われていた。胃癌手術から約5年後の平成18年8月、左下腹部痛を自覚し当院受診。腹部造影CTにて下行結腸に全周性壁肥厚および左腎盂〜尿管の拡張所見を認めた。注腸造影検査では下行結腸遠位での狭窄を認めた。下部消化管内視鏡検査では同部位での全周性の狭窄を認め、狭窄部肛門側より生検を施行したが、Group I(Non-specific inflammatory change with focal pseudomelanosis)であった。血液検査では腎機能を含め特記すべき異常を認めず、腫瘍マーカーはCEA 、CA19-9 ともに正常範囲内であった。平成18年8月大腸癌疑いにて開腹手術施行。腹膜播種は認めないものの腎盂・尿管・卵巣への浸潤を認めたため左結腸切除、左腎・尿管・卵巣合併切除術を施行した。術後病理組織診断では、下行結腸狭窄部に、腸管全層性(ss)に低分化腺癌のびまん性発育を認めた。粘膜固有層にも癌細胞が存在するが、粘膜全層性ではなく、粘膜面のびらん・潰瘍形成は認めなかった。前回手術の胃癌組織と類似しており、胃癌の再発・転移が考えられた。合併切除した左卵巣にも下行結腸と同様の低分化腺癌のびまん性の発育を認め、胃癌の転移として矛盾しない所見であった。