日本消化器内視鏡学会甲信越支部

17. 遡及的な検討が可能であった直腸肛門部悪性黒色腫の1例

佐久総合病院胃腸科
山里 哲郎、堀田 欣一、小山 恒男、宮田 佳典、友利 彰寿、高橋 亜紀子、古立 真一、新井 陽子、北村 陽子、篠原 知明
植松 大
佐久総合病院 外科

[症例]60代、女性。平成18年2月、排便時に肛門から腫瘤の脱出を認め受診した。全大腸内視鏡検査にて歯状線に接して平坦な黒褐色の色素沈着があり、色素沈着の内部には3個の隆起性病変を認めた。隆起の頂部は多結節状で白苔に覆われており、悪性黒色腫を疑った。生検では類円型で褐色色素を有する細胞の増殖を認め、免疫染色でHMB45陽性、S100陽性であり、悪性黒色腫と診断した。超音波内視鏡では第三層が保たれており、深達度は粘膜下層までと診断した。腹部CT、MRIでは明らかな転移は認めず、MRIのT1強調像で不均一な高信号を、T2強調像でも不均一な高信号を呈し、悪性黒色腫に矛盾しない所見であった。以上より粘膜下層に留まる直腸肛門部悪性黒色腫と診断し、D3郭清を含む直腸切断術を施行した。本例は8ヶ月前に血便を主訴に受診し全大腸内視鏡検査を施行されていたが、痔核として経過観察されていた。遡及的な検討では、この時すでに直腸Rbに亜全周性の黒褐色病変があり、内部に3個の隆起性病変を認めていた。8ヶ月間に隆起部分は不整形に増大したが、黒褐色の色素沈着の範囲はあまり変化を認めなかった。切除標本では直腸Rbに亜全周性に黒褐色の色素沈着を認め、内部にIp型とIs型の隆起を認めた。Ip型隆起は赤褐色で径25mm大であり、Is型隆起は黒褐色で径10mm大であった。免疫染色ではHMB45とS100が陽性であり、最終診断はMalignant melanoma、環周率80%、腫瘍径7×6cm、Ip+Is+IIa型,SM1(50μm),ly0,v0,N0,H0,P0,M0,DM0,PM0,RM0,stageI,Cur Aであった。追加治療は行わず、6ヶ月経過し無再発生存中である。[考察]本症例では8ヶ月前に比べて隆起部では増大したが、色素沈着部では変化を認めず、悪性黒色腫の発育進展を観察する事ができた。直腸肛門部に黒褐色の色素沈着を伴う隆起性病変を認めた場合は、悪性黒色腫を念頭におき精査を行う必要があると考えられた。