日本消化器内視鏡学会甲信越支部

15. 特異な形態を呈した大腸悪性リンパ腫の1例

伊那中央病院 内科
吉岡 美香
伊那中央病院 消化器科
三枝 久能、城崎 輝之
伊那中央病院 外科
境沢 隆夫、大野 康成、中山 中、竹内 信道、伊藤 憲雄
伊那中央病院 臨床病理
藤原 正之

症例は83歳男性.血便を主訴に来院した.精査のため下部消化管内視鏡検査を施行したところ,回盲弁直上に径4-5cm,粘膜下腫瘍様の立ち上がりを有する亜有茎性,球状の腫瘤を認めた.腫瘤は正常粘膜に覆われており,頂部は一部びらんを有していた.内視鏡検査時には間質系腫瘍を最も疑い,鑑別として悪性リンパ腫を考えた.びらん部分からの生検では異型リンパ球の集族とstromal cellが認められ,免疫染色の結果平滑筋腫が疑われた.回盲部以外には腫瘍性病変を認めず,外科的切除が適当と考えられたため,回盲部切除術を施行した.肉眼的には境界明瞭な結節状の腫瘍で,組織学的にはmalignant lymphoma(NH, diffuse large B cell type)であった.腸管の悪性腫瘍の中でも大腸の悪性リンパ腫は比較的稀な疾患であり,多彩な形態を呈するため内視鏡検査時に確定診断に至ることが困難な場合が多い.今回の症例も内視鏡検査時の形態や生検では診断に至らなかったものであり,若干の文献的考察を加えて報告する.