日本消化器内視鏡学会甲信越支部

12. 恒例発症の難治性潰瘍性大腸炎の経過中、CMVアンチゲネミア陽性を呈し、肺アスペルギローマおよびカリニ肺炎が疑われる間質性肺炎を合併した一例

新潟県立中央病院 内科
丸山 正樹、湯田 知江、横山 恒、平野 正明、藤原 敬人
新潟大学大学院 医歯学総合研究科 消化器内科学
津端 俊介、杉村 一仁

潰瘍性大腸炎の治療として、副腎皮質ホルモン剤・免疫抑制剤・白血球除去療法など免疫抑制を指向する治療が行われるが、日和見感染的に真菌感染やカリニ肺炎まで合併する例は比較的稀である。今回我々は、難治性潰瘍性大腸炎治療中、CMVアンチゲネミア陽性を呈したため、ガンシクロビルを投与しつつLCAPを行ったところ潰瘍性大腸炎は速やかに寛解したものの、続発して肺アスペルギローマおよびカリニ肺炎が強く疑われる陰影を胸部CTにて指摘された症例を経験したので報告する。症例は、77才男性。2000年(71才時)発症の左側大腸炎型潰瘍性大腸炎で、発症以来、近医で投薬治療を受けていた。2005年6月、増悪したため当院を紹介され第1回入院した。このときの入院経過も遷延したが、経過中CMVアンチゲネミア陽性が指摘され、ガンシクロビルを投与したところ寛解し9月に退院している。その後、外来にてPSL 7.5mg/day→5mg/dayへ減量したところ、再燃。2006年3月再入院した。水溶性プレドニゾロン60mg/dayの強力静注療法を実施し、寛解を得たものの、PSL 40 mg/dayへ減量したところ再び再燃。このとき入院時陰性であったCMVアンチゲネミアが再び陽性となったため、ガンシクロビル500mg/day投与しつつLCAPを4回行ったところで寛解を得た。このころスクリーニングで撮影した胸部X線単純写真にて左肺に異常陰影を指摘され、胸部CT実施。左胸膜直下にFungs ballを指摘されLCAP中止の上、イトラコナゾール100mg/day開始。効果判定のため実施した胸部CTで、さらに新たにカリニ肺炎が疑われる間質影が両下肺に出現していた。ST合剤を併用し、胸部陰影の軽快を得たため6月24日独歩退院。現在、PSL 10mg/day p.o.にて経過良好である。潰瘍性大腸炎の治療においても、特に高齢者や難治例では、より日和見感染対策が重要であると考えられた。