日本消化器内視鏡学会甲信越支部

11. 経時的サイトメガロウイルス(CMV)抗原検索が診断に有効であったCMV合併潰瘍性大腸炎の3例

新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野
井上 聡、本田 穣、栗田 聡、横山 純二、杉村 一仁、青柳 豊

近年潰瘍性大腸炎(UC)の治療で免疫抑制剤が多用され、CMV活性化に伴うUCの難治化が問題である。我々は血中CMV抗原陽性化を認めたステロイド抵抗性UC3例を経験し、経時的なCMV抗原の変化を観察し得たので報告する。〔症例1〕51歳,男性。1989年に全大腸炎型UCと診断。2004年6月、近医でCF施行後から血性下痢、腹痛が出現。UC急性増悪として6/23に同院入院。ステロイド増量が無効で、7/2に転入院した。入院時CMV antigenemiaで陽性細胞数は0-1だった。CFでは全大腸に活動期の所見を認めた。5-ASA、6MPに加えて水溶性プレドニン70mgへ増量し、LCAPを施行。下痢が続き、8/2にはCMV陽性細胞数は7-9と増加した為、GCV 600mg/日を2週間投与して陰性化した。8/30からは下痢も改善して退院した。〔症例2〕32歳,女性。1999年発症のUC症例。2006年7月に血便、下痢が出現。7/31から5-ASA、プレドニゾロン(PSL)25mg開始するも改善せず、下痢頻回にて8/22に入院。水溶性プレドニン60mgで治療を開始。翌日にLCAPを施行したが、症状や炎症所見は改善せず高熱も出現した。腹部CTでも全大腸の炎症増悪が疑われ、8/25よりシクロスポリン150mg/日投与を開始。発熱と炎症所見は改善したが下痢は続いた。9/1のCMV陽性細胞数は1-1だったが、9/6には10-6と増加した為GCV 500mg/日を開始した。しかし炎症所見や腹痛、下血は増悪し、9/8にsubtotal colectomyを施行された。〔症例3〕37歳,男性。2000年発症のUC症例。2006年7月中旬から風邪症状と共に腹痛、下痢、下血、発熱が出現。7/28のCFでUC再燃と判断されPSL 20mg内服を開始した。30mgへ増量するも改善せず、8/8に入院。この時CMV陽性細胞数1-3だった。水溶性プレドニン70mg、LCAPで治療し、速やかに下血は消失した。しかし8/17のCMV陽性細胞数が5-5に増加し、CFでは横行結腸に打抜き様の潰瘍を認めた。CMV腸炎合併と考えてGCV 500mg/日を2週間投与して陰性化した。9/1のCFでは潰瘍底に再生上皮を認め、経過良好にて退院した。〔結語〕UC緩解導入療法中においてCMV活性化の時期に一定の傾向はなく、抗ウイルス剤要否の判断基準も不明確である為、経時的CMV抗原のモニターはCMV活性化の早期診断に有効と考えられた。