日本消化器内視鏡学会甲信越支部

5. 食道癌化学放射線療法後の局所遺残再発に対しESDにて一括完全切除可能であった2例

新潟大学医歯学総合病院 第三内科
竹内 学、小林 正明、船田 理子、坪井 清孝、佐藤 祐一、横山 純二、塩路 和彦、河内 裕介、廣野 玄、杉村 一仁、成澤 林太郎、青柳 豊
新潟大学医歯学総合病院 放射線科
笹本 龍太
新潟大学医学部 分子・診断病理学分野
渡辺 玄、味岡 洋一

Stage Iの食道癌に対する化学放射線療法後の表在性の遺残再発に対しては、内視鏡的粘膜切除術が施行されることが多いが、深部断端が陽性となる可能性がある。一方、近年粘膜下層を視認しつつ治療する内視鏡的粘膜下層剥離術(以下ESD)が確立された。今回食道表在癌の化学放射線療法施行後、局所遺残再発(深達度SM)を来した症例にESDを施行し一括完全切除可能であった2例を提示する。症例1:70歳代男性。H17年6月、他院EGDにて胸部中部食道に径2cm大の食道表在癌0-Ipl+IIc(T1(SM)N0M0 stage I)を認めた。肺気腫による呼吸機能低下、アルコール性肝障害、高齢および本人の希望もあり当院放射線科にて放射線単独療法の方針となり計70Gyの照射を施行した。治療約1ヶ月後のEGDにて同部に遺残を認め、EUS上も深達度SMであり、CT上リンパ節転移を認めなかったことより、遺残病変に対しsalvage治療として ESDを施行した。粘膜下層剥離時に白濁した腫瘍塊を認めるも十分な粘膜下層のspaceを確保でき、一括切除可能であった。病理診断:SCC(well)、sm(depth750μ)、ly0、v0、LM(-)、VM(-)。ESD6ヶ月後のEGDでは再発は認めていない。症例2:70歳代男性。H17年6月他院EGDにて胸部中部から下部食道に全周性の径7cm大の食道表在癌0-Ipl+IIc(T1(SM)N0M0 satge I)を認めた。本人の選択により、当院で化学放射線療法の方針となり、化学療法はlow dose FP(CDDP3mg/m2、5FU250mg/m2)、放射線療法は計66Gy(longT 40Gy+boost 26Gy)を施行した。治療12ヶ月後のEGDにて局所再発を認め、EUS上深達度SMであったためsalvage ESDを施行した。粘膜下層には線維化はなく、十分な膨隆も得られ、一括切除可能であった。病理診断:SCC(mod)、sm(depth1000μ)、ly0、v0、LM(-)、VM(-)。食道癌に対する化学放射線療法後の深達度smまでの局所遺残再発に対して、salvage ESDは有用な選択肢のひとつと考えられる。