患者は63歳、男性。2004年5月頃から食欲不振、胸背部痛が出現。7月になり発熱・倦怠感が出現。精査加療目的で7/6に当院を紹介受診した。入院時血液検査で分葉球主体の著明な白血球増多(WBC 61200/μl, band 22%, seg 74%)、認めた。胸腹部CTでは肝門部・噴門部・左気管傍・左右頚部・左鎖骨上窩リンパ節の腫大を指摘された。G-CSF産生腫瘍を疑い精査したところ、上部消化管内視鏡検査で切歯列から30-35cmに3型の腫瘍性病変を認め、同部生検で低分化扁平上皮癌を認めた。頸部リンパ節病変でも同様の組織所見を認め進行食道癌、多発リンパ節転移(stage IVa)と診断した。血中G-CSFは353pg/mlと上昇しており、腫瘍の生検検体の免疫組織学的検討からG-CSF産生腫瘍が考えられた。7/20から化学放射線療法を施行。治療による腫瘍の縮小に伴い白血球数、G-CSF値、SCCは低下した。その後、2005/6/26患者が腫瘍死するまでの間、腫瘍の病勢にともなって、白血球数、G-CSF値は変動した。
G-CSF産生腫瘍は肺癌が多いが、食道G-CSF産生腫瘍の報告は少ない。貴重な症例と考え報告する。