日本消化器内視鏡学会甲信越支部

3. 興味ある形態を呈した多発性食道平滑筋腫の1例

長野市民病院 消化器科
立岩 伸之、長谷部 修、丸山 雅史、児玉 亮、越知 泰英、長田 敦夫
長野市民病院 病理
保坂 典子
いしぐろクリニック
石黒 淳

症例は58歳,男性。2006年6月に近医にて施行された上部消化管内視鏡検査で,食道に多発する粘膜下腫瘍を認めたため,精査加療目的に7月5日に当科に紹介となった。当科にて施行した食道造影では胸部上部から中部食道にかけて3〜14mmの半球状で表面平滑な隆起性病変を多数認めた。上部消化管内視鏡検査では切歯より21〜26cmの食道後壁を主体に多発する粘膜下腫瘍を認めた。超音波内視鏡ではすべて内部が均一な低エコー腫瘤であり,一部に石灰化と思われる高エコー域を認めた。また,粘膜筋板に主座を置くものと固有筋層に主座を置くものが混在していた。生検では食道扁平上皮下に好酸性の平滑筋繊維様の組織を認め,免疫染色ではCD34(-),c-kit(-),smooth muscle actin(+),S100(-),synaptophysin(-),Ki67は全視野でわずかな陽性を認めるのみであり,平滑筋腫と診断した。現在外来にて経過観察中である。食道平滑筋腫の多発例は比較的稀といわれており,興味ある形態を呈していたため報告する。