日本消化器内視鏡学会甲信越支部

2.腹腔鏡下手術により全身状態の改善を認めた食道アカラシアの1例

千曲中央病院 内科
草場 亜矢子、宮林 千春、窪田 芳樹
長野市民病院 消化器科
長谷部 修
長野市民病院 外科
関野 康、宗像 康博

症例:60歳代女性。主訴:食欲低下、胸部のつかえ感。現病歴:2003年より食道アカラシアで不定期に通院していた。強皮症の合併は認めなかった。内視鏡下に噴門部のバルーン拡張を行い、Ca拮抗剤を投与して、外来加療を続けていたが著明な改善を認めなかった。症状の増強を認めたため2006年5月当科に入院した。入院時身体所見では身長140cm、体重26.6kgで、血液検査所見ではTP 5.4mg/dl, ALB 2.8mg/dl, ChE 112U/l, BUN 29.8mg/dl, Cre 0.6mg/dl, Hb 10.6g/dl, SCC 25ng/mlと、低栄養と脱水、貧血、腫瘍マーカーの上昇を認めた。胸部レントゲンにて低蛋白血症に起因すると考えられる両側胸水と腹水を認めた。上部消化管内視鏡検査では食道胃接合部の狭窄と口側食道の拡張、大量の食物残渣の貯留を認めた。悪性腫瘍の合併は認めなかったが、重度の食道炎と食道カンジダ症を認めた。食道造影では食道の著しい拡張(最大径5cm)を認めた。再度食道の狭窄部に対しバルーン拡張術を行うも、経口摂取にて食道内に大量の食物残渣が停留した。保存的加療の限界と考え、手術療法目的に6月に長野市民病院に紹介、7月に腹腔鏡下Heller-Dor手術を施行された。自覚症状の改善と経口摂取の再開が可能となり退院、現在は経過良好である。