日本消化器内視鏡学会甲信越支部

37. 家族性大腸腺腫症による大腸全摘23年後、ファーター乳頭部癌と特異 な皮膚所見を呈した人工肛門部腫瘍を発症した1例

市立甲府病院 外科
巾 芳昭、平賀理佐子、金井敏晴、千須和寿直、宮澤正久、加藤邦隆
同 内科
三浦美香

 症例は、65歳、女性。主訴は黄疸。既往歴は、昭和58年、家族性大腸腺腫症により結腸全摘術、昭和59年、直腸全摘術施行。現病歴は平成18年3月頃より、黄疸が出現し近医を受診。精査目的に、当科を紹介された。精査の結果、ファーター乳頭に潰瘍性病変を認め、生検にて乳頭部癌と診断された。また、人工肛門周囲の皮膚に地図状のわずかに隆起した発赤を認め、人工肛門粘膜には、3cm大の隆起性病変も認めた。腫瘍部はtubular adenoma with severe atypiaと診断された。平成18年4月7日、ファーター乳頭部癌の診断にて、膵頭十二指腸切除を施行。さらに、人工肛門周囲の皮膚を含め、人工肛門を切除した。術後の病理検査では、人工肛門部腫瘍は、高分化型腺癌との鑑別が難しい、tubular adenoma with severe atypiaと診断された。また、周囲の地図状の発赤部分には重層扁平上皮と、腺腫様腺管が混在していた。